はしがき:医事法セミナー(新版)第2版

 新版の前著『医事法セミナー(上)・(下)』は、1999年から2000年にかけて医療系の専門雑誌に連載されたものを中心としてまとめたものであった。それから4年後、読者の方々からの意見として多く耳にしたのは1冊にまとまらないかということだった。そして読者の利便性と希望から『医事法セミナー(新版)』は、2004年に発刊された。もともと本書は、医事法学の初学者や医療従事者の方々に医事法学とは何か、問題点とは何かなどをなるべく理解しやすく、できうれば一般の方々にも平易な医事法学を身近に知ってもらえればと執筆してきたものである。したがって情報はできるだけ新しいものを提供すべきであり、当然の帰結として全体的な改訂を行うにいたった。

 第2版の改訂にあたり、新版発行から5年の間に医療・保健・福祉を取り巻く状況は、さらに大きく変化を遂げた。特に2006年6月に公布された「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」により、医療法は国民の医療に対する安心・信頼を確保し、質の高い医療サービスが適切に受けられる体制構築のため、2007年4月の施行を中心に、同1月(有床診療所に関する規制見直し)、そして2007年の医師に始まり、2008年4月より薬剤師、看護師等の再教育研修制度の創設等が、順次改正されることとなった。この再教育制度において、日進月歩に進歩する医学技術に対して、近年、課題を指摘され続けていた医療従事者の倫理観の不足を法制度で位置づけることになった。本来、当然持っているべき専門職の倫理観を免許取り消し等において受ける再教育研修に必修化されたことは、「良質な医療の提供」が何であるかを考える一つの指針となった。このような医療法の他、さまざまな法規を改正となった。また、「高齢者の医療の確保に関する法律」や「障害者自立支援法」を加えるなど、近年の医療と福祉の融合に必要な法改正をなるべく取り入れ、解説するよう努めた。

 もちろん、法制度に目立った改正がなく、まったく変更しなかった部分もある。そして法学や医療の専門分野に携わる方には、法学の文章としてはたどたどしかったり、やさしすぎる表現があり、物足りなく感じる部分もあると思う。これは、もともと難解な法律の内容をなんとか多くの方々に理解していただきたいという意図と、筆者の文章力がまだまだ稚拙なことによる。ご容赦いただければ幸いである。なお、巻末には本文の理解の助けになればと医療に関する3つの資料をつけたが、ぜひ一読していただきたいと思う。

 さて、本書の改訂においては、多くの方々のご協力があった。まずは本書の改訂を望み、さまざまなご意見をくださった読者諸氏の存在である。これなくしては今回の改訂はなかったといえる。そして第2版の改訂においては、九州保健福祉大学講師秋山武吉先生と中央医療学園専門学校井上貴史事務長に多大な労をいただき、医療科学社の斎藤聖之氏には、前回同様にさまざまな協力をいただいた。最後に長年にわたり筆者にさまざまな示唆をされ、本書の帯にも過分なお言葉をいただいた医事評論家の水野肇先生にこの場を借りて感謝の意を表したい。

2009年春 前田和彦