「超音波は生体の翻訳者」なるほど,と思いませんか.エックス線のように害が無く,苦痛が無く,簡便な走査で身体のほとんどの部位について観察することができます.このような夢の検査を診療の場で活用しない手はありません.それには,おなか全体についての検査法を知ることが必要です.筆者は規則性,再現性,簡便性を配慮した方法,「"の"の字2 回走査」による16 画像を習熟することで,この夢の検査を現実のものにすることができると考えています.具体的には,おなかに"の"の字を2回書く手順で走査することで腹部の全臓器の検査を完結させるというものです.本冊子では,最初に各臓器について必要な事柄について解説,次に正常例を呈示し走査のHow to について解説しました.では,どのようなエコー像を異常例として読影するのでしょうか.これらの疑問についても「疾患のチェックポイント」で模式図により呈示しました.また,初心者にとって検査時,すぐ開いてみることができるようコンパクトサイズの構成としました.なお,症例についての掲載はしてありませんが,拙著『腹部エコーの実学』(医療科学社)およびケアネットTV 制作『腹部超音波手技大原則』のDVD を参考にしていただければ,静止画像・動画像ともに学習することができ,さらに超音波検査への魅力を増幅することができるものと考えます.
超音波に関心をお持ちの先生,学生さんに是非この簡便な検査法を知っていただき,「超音波は生体の翻訳者」としての意義を実感していただくことが,苦痛のない医療を欲している国民皆様の希求に呼応し,対処できるものと信じるからです.
最後になりましたが本冊子をまとめるにあたり,浜松南病院消化器病・IBD センター長花井洋行先生からは過分なる「序」を賜り感謝と御礼を申し上げます.今後,これを小生の目標と定め邁進したいと想います.この小冊子が超音波検査の醍醐味を実感していただく契機になれば誠に幸せに存じます.
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2009年(平成21 年)2 月11 日
杉山 高
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