はじめに:Excelによる画像再構成入門

 X線CT,磁気共鳴イメージング(magnetic resonance imaging:MRI),単光子放射型断層撮影(single photon emission computed tomography:SPECT),陽電子放射型断層撮影(positron emission tomography:PET)などは体外計測したデータから人体の断面を画像化する技術で今日の画像診断に広く利用されている.画像再構成とは計測データから数学的方法によって断面を復元することであり,X線CTでは線減弱係数分布,MRIでは水素原子数分布,SPECT・PETでは放射能分布を反映した画像が得られる.

 画像再構成はフーリエ変換の投影切断面定理を利用する解析的方法と,仮定した解を繰り返し計算によって更新し真の解に近づける逐次近似法に大別される.画像再構成は一種の逆問題であり,実際にコンピュータを用いて画像再構成を行うにはC言語などによるプログラミングが必要である.しかし,初心者にとって画像再構成のプログラミングは容易ではない.

 本書は医用画像処理や画像再構成に関心がある学部学生,大学院生,技術者の方々に役立つよう,広く普及している表計算ソフトウエアのExcelを用い,2次元フーリエ変換法,フィルタ補正逆投影法,重畳積分法などの解析的画像再構成法と,逐次近似法のひとつである統計的画像再構成法の最尤推定−期待値最大化(maximum-likelihood-expectation maximization:ML-EM)法について解説している.

 本書の最大の特徴はExcelを電卓代わりに用い,画像再構成をわかりやすく学習できるようにした点である.本書は画像再構成の数学的な基礎とアルゴリズムの実装を効率よく学習できるように工夫しており,C言語などによる画像再構成のプログラミングにも役立つ.本書は以下のように全体で3章から成り立っている.


 第1章の「画像再構成」は,画像再構成の数学的な基礎をまとめている.
 第2章の「解析的画像再構成法の実習」は,解析的画像再構成法のアルゴリズムを解説している.
 第3章の「統計的画像再構成法の実習」は,統計的画像再構成法のアルゴリズムを解説している.


 本書のプログラムの開発は,株式会社第一ラジオアイソトープ研究所(現 富士フイルムRIファーマ株式会社)による東京都立保健科学大学受託研究「統計的画像再構成法の定量性に関する研究(平成13年10月〜16年9月)」の助成を受けて行いました.ディジタル画像処理から画像再構成に至る一連のプログラム開発の機会を与えていただいた,富士フイルムRIファーマ株式会社にお礼申し上げます.

 最後に,出版に際し,医療科学社出版部長 関谷健一氏には大変お世話になりましたことをお礼申し上げます.

2007年8月
篠原 広行
坂口 和也
橋本 雄幸