はじめに:SPECT画像再構成の基礎

 本書は,体内に静注された放射性医薬品から発生する放射線を体外計測し,コンピュータによって人体内部の放射能濃度を画像化する核医学装置の画像再構成について述べている.核医学装置には,最近メディアでも紹介される機会が増えた陽電子放射型断層撮影(PET)や単光子放射型断層撮影(SPECT)などがある.PETは陽電子を放出する放射性同位元素を用い,陽電子と電子の結合の際に生じる2つのγ線を計測し,そのデータから原画像を再構成する技術である.一方,SPECTは放射性同位元素から放出される1つのγ線を検出して画像再構成する技術である.本書は後者のSPECTを扱っている.実際にコンピュータを用い画像再構成を行うには,C言語などによるプログラミングが必要である.

 本書は画像再構成に関心がある学部学生,大学院生,技術者の方々に役立つよう,X線CTとSPECTの基礎から投影データの作成,画像再構成について,プログラミングを解説している.本書は以下のように全体で6章から成り立っている.

 第1章の「X線CTの投影データ」は,画像再構成の計算機シミュレーションに必要な原画像(数値ファントム)の作成,原画像の積分変換に相当する体外計測データの作成について述べている.

 第2章の「X線CTの画像再構成」は,X線CTの投影データから原画像を復元する画像再構成について述べている.

 第3章の「SPECTの投影データ」は,SPECTの投影データの作成について述べている.

 第4章の「SPECTの画像再構成」は,SPECTの画像再構成について述べている.

 第5章の「深さに依存する検出器特性の補正」は,SPECTのコリメータによる幾何学的分解能の劣化を補正する方法について述べている.

 第6章の「ノイズ」は,X線CTとSPECTにおけるノイズの取り扱いについて述べている.

 本書を読まれて磁気共鳴イメージング(MRI)の信号計測や画像再構成に関心をもたれた方は,姉妹書の『MRI画像再構成の基礎』(2007年春刊行予定)を参考にしていただければ幸いである.また,C言語の基礎の部分や画像処理の部分を詳しく勉強したい方は,姉妹書の『C言語による画像再構成の基礎』を参考にしていただければ幸いである.

 本書のプログラムの開発は,株式会社第一ラジオアイソトープ研究所による東京都立保健科学大学受託研究「統計的画像再構成法の定量性に関する研究(平成13年10月〜16年9月)」の助成を受けて行いました.X線CTの投影データからSPECT画像再構成に至る一連のプログラム開発の機会を与えていただいた,株式会社第一ラジオアイソトープ研究所にお礼申し上げます.

 最後に,出版に際し,医療科学社出版部長 関谷健一氏には大変お世話になりましたことをお礼申し上げます.

2006年11月
橋本 雄幸
横井 孝司
                             篠原 広行