介護保険制度は,社会の高齢化に対応して平成12年4月から始まった.しかし,制度開始から約7年を経過した今日,要介護者は増加し,そのための費用も増大した.介護保険制度はその間数回の法改正があり,特に平成18年4月からは「予防重視型システム」が導入され,介護予防が重要視されることになった.
介護保険では福祉の措置時代とは違い,利用者の自己決定によるサービスの選択が可能となり,さらに規制緩和の推進による多様な民間事業者の参入が促進されたことから,営利法人さらには住民参加型の非営利組織などの事業者が積極的に参入可能となった.また介護保険法のなかには,「機能訓練指導員」が創設されたため,柔道整復師らの業種でも介護保険に参入が可能となった.そのような背景のもとで,先覚的な柔道整復師らは,自らの業務での経験を生かして介護保険事業に参入し,その多くは介護支援専門員や通所介護事業所での機能訓練指導員として活動を行っている(仔細は本文参照).
介護や介護予防ではいろいろなサービスがあるが,その目的は,利用者が尊厳をもって自立した生活を営み,要介護状態となること予防して健康保持増進に努め,要介護状態となっても介護サービスを利用しながら能力の維持向上に努めることにある.機能訓練指導員としては,通所介護事業などで利用者への機能訓練を行うことで,能力の維持向上をはかることが活動の主体となる.
今回,この機能訓練指導員としての事業参入のために手引き書を出版することになった.出版の趣旨は,特に柔道整復師や鍼灸師らへの介護保険の事業参入マニュアルを目的としている.本書の内容は,主に柔道整復師からみたマニュアルとなっているが,他の職種の方にも参考となるものである.
原稿を書いていただいたご執筆各位には大変ご苦労をおかけしたと考えているが,各担当分野での経験に即した内容は,今後参入を考えている方には大変役に立つものと思われる.介護保険の機能訓練指導員として関わる柔道整復師はもちろん,鍼灸師,マッサージ師などの方にも,治療院に併設した介護サービス事業所の開設に役立ち,また理学療法士などの方にも病院内での活動のほか,自分で事業を考える際の参考にしていただければと思う.これからの介護保険制度において,全国の機能訓練指導員の活躍が,今後の介護保険の発展のために重要な位置を占めていくものと考えている.
出版に当たり,構想段階から出版に至るまでいろいろとご指導いただいた医療科学社に感謝申し上げます.
2007年3月吉日
小坂 善治郎・前田 和彦・藤田 正一 |
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