編著者 序:超実践マニュアル MRI

 黄金色に輝く銀杏並木が秋晴れの空まで続く大阪の地で,船橋正夫氏より,この『超実践マニュアルMRI』の依頼を受けた.いままでにない,学生向きでもなく,スペシャリスト向けでもない,ローテータを対象としたマニュアル本をつくりたいという依頼であった.それも,各モダリティのシリーズ本ということであった.

 折しも,われわれは「マルチモダリティシンポジウム“VERSUS”」という日本の各モダリティのスペシャリストで構成される研究会を持っていたため,この研究会で監修することを承諾した.そのシリーズの最初がMRIである.

 現在,各施設の放射線科内での人事ローテーションは,当直時の緊急検査への対応や,広い視野を持った人材育成のため,各モダリティを経験させることが多い.しかし,各モダリティの技術進歩は飛躍的に進んでおり,学生時に学んだときとは違う世界を有する場合もある.その状況下にローテーションで回ってきた診療放射線技師は,右も左もわからず戸惑うことが多い.

 私自身,十数年前に初めてMRIに入ったときには,そこで使われる言葉自体が宇宙語のようで,まったく理解できなかったことを記憶している.そのような方々へ救いの手を差し伸べる気持ちで,われわれはこのマニュアル本の作成に挑んだ.基本原理は必要最小限に押さえ,即実践として役立つように構成したつもりである.忙しい業務の合間に調べられるように,各項目の最初に要約を挿入し,撮像条件と撮像範囲をおいた.また,皆さんからよく受ける質問項目をQ&Aとポイントとしてまとめ解説を入れた.

 この本を装置コンソールサイドに置いていただき,検査中に戸惑い困ったとき,わらをも掴みたい手でページをめくっていただければ,問題が解消されると信じて皆様のお手元へお送りします.

 最後に本書が刊行をみるに至ったのは,医療科学社出版部の長谷川三男,齋藤聖之両氏の協力あってのことである.そして,なによりも,幾度となく編集会議に駆けつけてくれたVERSUS研究会のメンバー,本郷隆治,横野重喜,平野透,石風呂実,井田義宏,諸氏の協力がなければこの本は完成しなかった.この場を借りて謝意を表すものである.


2006年3月吉日
小倉 明夫